一般に脱腸と呼ばれる良性の病気です。
成人の鼠径ヘルニア(そけいヘルニア)は自然に治ることはなく、 一般的に時間経過とともに鼠径部膨隆や鼠径部痛がひどくなっていきます。多くはありませんがヘルニア嵌頓(かんとん)などの重大な合併症を起こすことがあり、治療には手術が必要となります。 当院のソケイヘルニアの手術症例数は、1992年から2021年までで6000例を超えています。メッシュ(人工補強材)を使ったさまざまな手術法が行われていますが、鼠径ヘルニア治療のトピックとしては、ここ最近10年間で手術法は大きく変化し、従来の鼠径部切開法(クーゲル法、メッシュプラグ法など)から腹腔鏡下手術が主流となったこと、腹腔鏡下手術の普及によって鼠径部の解剖がより解明され熟知されるようになったことなどがあげられます。また、当院では年間250~300人前後の患者さんのほぼすべて(99%)にこの腹腔鏡下手術を行っています。
鼠径靭帯の上で、外側から出てくるヘルニア。
鼠径ヘルニアでは一番多いヘルニアです。
鼠径靭帯の上で、内側から出てくるヘルニアです。
鼠径靭帯の下から出てくるヘルニア。
出産を経験された痩せ型の女性に多く見られます。
成人の鼠径ヘルニア(脱腸)は自然に治ることはありません。また、有効なお薬や運動療法もありません。
ヘルニアバンド(脱腸帯)を使用している方もいらっしゃいますが、これらは鼠径ヘルニアを治すものではなく、外から押さえることにより、一時的に鼠径ヘルニアの症状を軽くする対症療法です。
鼠径ヘルニアは良性の病気ではありますが、放置すると嵌頓(かんとん:飛び出した部分が元に戻らなくなること)になることがあり、緊急手術が必要になることもあります。嵌頓(かんとん)は鼠径ヘルニア患者全体の約5%程度に起こると考えられていますので、スケジュールのよい時期を選び、早めの手術治療を受けましょう。
最初に医師と相談し、手術の日程を決めます。
ここ10年ほどで手術法は大きく変化し、従来の鼠径部切開で行う手術(代表的なものとしてクーゲル法、メッシュプラグ法など)から腹腔鏡下手術が主流となってきましたが、患者さんの年齢(85歳以上の超高齢者)、性別(若年女性など)、既往症(例えば前立腺癌の手術後、鼠径ヘルニア再発、心疾患、呼吸器疾患など)に応じて施設によっても手術法もさまざまです。
当院ではこのような鼠径ヘルニアに対する患者さんに対しても多くの場合腹腔鏡下手術(TAPP)を行っておりますので、遠慮なくお気軽にご相談ください。
手術前に必要な検査(術前検査)が行われます。通常は、採血、検尿、心電図、レントゲン撮影などの一般的な検査です。
検査に問題がなく、手術日が決定した場合、手術前や手術当日に医師や看護師から、病名、手術法、麻酔法、手術内容と時間、食事や運動など、手術前後の生活上の注意や手術直後、退院後の経過や注意について説明があります。その内容で解らないことや希望などがあれば、医師や看護師に質問や相談をして安心して手術を受けてください。
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