日本における肝がん発症原因の70%以上を占めるウイルス性肝炎。特にC型肝炎、肝硬変が進行してがん化するケースが多いが、近年、治療の選択肢が増えたことで、高い確率でウイルスを排除できるようになりました。
「C型肝炎ウイルス」は、血液を媒介に感染します。そのため、注射針の使い回しや輸血など、C型ウイルスの存在が知られてなかった時代の医療行為で感染した中高年者が多く、一定年齢以下になると感染者もぐっと少なくなります。
それでも、ファッション目的の入れ墨や、違法や薬物の回し打ちなどで感染する若い人が後を絶たないのが実情。C型肝炎ウイルスに持続感染すると、ほとんど自覚症状がないままに肝硬変へ、そして肝がんへと進行するリスクが大きいのです。
従来、C型肝炎の治療には、ペグインターフェロンとリバビリンという薬を併用する「2剤併用療法」が行われていました。しかし我が国では、インターフェロンが効きにくくウイルス量も多い「1b型」患者さんが多いため、治療成績はあまり高くありませんでした。
そこで、「テラプレビル」や「シメプレビル」という抗ウイルス薬を加えた「3剤併用療法」が開発され、治療成績も向上。ただ、テラプレビルは肝機能障害、皮膚障害などの副作用が発生する可能性が高かったため、慎重に使用せねばなりませんでした。
そんな中で2014年より、「ダクラタスビル」「アスナプレビル」や2015年より「ハーボニー」「ヴィキラックス」という経口薬(飲み薬)の使用が承認されました。これらの薬剤は、インターフェロンを必要としない上、副作用の恐れもほとんど無く、承認を受けてから現在までで90~97%の治療成功率が報告されています。
優れた点ばかりのように思われる新薬ですが、ウイルスのある特定の場所に変異のある患者さんには、効果が弱いことが判っています。また、使用開始から2年も経っていませんから、中・長期的な観察が必要なデータも得られていません。
したがって、新薬で治療成績が上がったとしても、C型肝炎の患者さんは定期的に、肝機能の状態を診察する必要があります。そのためにはまず、きちんと検査を受けて、ウイルス感染の有無を確認することが重要です。また、近年は脂肪肝が原因の肝がんも増えています。
検査を受け、さらに日頃の食生活を注意することも、肝がんを防ぐ重要な方策といえるでしょう。
朝日新聞(2016年7月17日) |